『龍の庭〜異次元空間』
第23回全国都市緑化おおさかフェア出展作品
総合部門銀賞
この作品は、屏風の龍画、古びた観音画、苔のついた石、木の根ばり…によって、時間の経過を表現しています。
天龍山・流水庵は、この庭の道を隔てた席にある茶室・豊松庵へ続く露地という設定になっています。
庭の竹穂垣の足元から見える飛び石によって、さらに奥があるということを予感させ、ここから茶室・豊松庵へ続いている、という異次元空間です。
白砂で表現した枯れ流れは、手前にある井筒から聞こえる水の音によって、意識の世界において流れる川へと変化します。
(本作品を見る時は、心の目で見ていただくことによって、目の前の庭は、どの瞬間も変化し続けている、ということを感じ取っていただけると思います。)
龍画は屏風にすることによって、動きのある立体的な龍を表現しています。(本作品から平面の龍画から屏風タイプの龍画にすることによって、動きを出しています。)
行の清水垣、竹穂垣、四つ目垣、門、つくばい、灯篭、塵穴など、伝統的な手法によって、露地には欠かせない侘び、サビを表現しています。
流れの勢いで、延べ段の一部が破壊される、という表現手法をとっているのがわかりますか?
(見た目はふぞろいの延段ですが、流れの勢いが強く、最初は形があった延段もこのように破壊されてしまった、という表現。これも動きの一つの表現方法です。)
破壊された延べ段の上に、関守石があります。
なぜ、ここにあるのか? という疑問をもたれる方もいらっしゃると思います。
それは、四つ目垣を境にしてこの世(物理的世界)とあの世(意識の世界)を表現しているからです。
関守石は、「ここから先は帰ってこれなくなるから行くな。」、と警告をしています。
灯篭に灯りがともる夕暮れ時、四方仏の水鉢を前にしたその瞬間、白砂で表現した流れは、流れる水へと変化する、ということを表現しています。その一瞬を表現することが、僕の作品のテーマの一つでもあります。
なぜ「その一瞬」を表現することを大切に考えているかというと、
すべて(過去・現在・未来)は、「その一瞬」あるからです。その一瞬を見ることによって、すべてを見ることができると考えるからです。
これを感じ取っていただけると、作者として大変うれしく思います。
この作品のあらゆるパーツには、それぞれの意味を与えています。
そして、この庭も見る者が自由に意味を与えることによって、どの瞬間も変化し続ける異次元空間なのです。
延段が流れによって破壊されたその瞬間です。
奥に見える竹穂垣の中にキッコウチクが入り込み一体化していますが、これも時間の経過を表現しています。